「子育ては、『いかにして良いアタッチメントを築くか』に尽きる」これが、わたしたちの信念です。叱ることは子育てにおいて避けられない営みですが、その方法によって子どもの心の成長は大きく変わります。
発達心理学では、母子の間で行われる心のやりとりを「アタッチメント(愛着関係)」と言います。このアタッチメントが安定して形成されている子どもは、失敗しても「自分は大丈夫」と思える自己肯定感を育むことができます。しかし、叱り方を誤ると、この大切な親子の絆を傷つけてしまうことがあるのです。
大人が認知している「子どもの行動」は、大人の脳で思考したものであって、子どもの真実を表わしていません。だからこそ、叱る前に子どもの視点に立ち、その行動の背景にある気持ちを理解することが重要になります。
まず、どのような叱り方が子どもの自己肯定感を傷つけるのかを理解しましょう。以下のような叱り方は、子どもの心に深い傷を残す可能性があります。
「だめな子ね」「どうしてそんなこともできないの」といった言葉は、子どもの行動ではなく存在そのものを否定しています。子どもは「自分には価値がない」と感じてしまい、自己肯定感が大きく低下します。
「〇〇ちゃんはもうできるのに」「お兄ちゃんは3歳でできたよ」という比較は、子どもの自己肯定感を最も傷つける叱り方のひとつです。子どもは「自分は劣っている」という劣等感を抱き、挑戦する意欲を失ってしまいます。
親だって人間です。疲れているとき、忙しいときについカッとなることもあるでしょう。しかし、感情的な怒りは子どもに「怒られた」「自分はダメな存在だ」というマイナスの感情しか残しません。
「また同じことして」「この前も言ったでしょう」と過去を持ち出す叱り方は、子どもに「自分は成長できない」という思い込みを植え付けてしまいます。
では、子どもの自己肯定感を傷つけずに叱るには、どうすればよいのでしょうか。わたしたちは発達心理学の知見を、育児における実践の立場から伝えるカリキュラムを組んでいます。その中から、すぐに実践できる基本ステップをご紹介します。
怒りのピークは6秒で過ぎると言われています。子どもの行動にイラッとしたら、まず深呼吸をして6秒数えましょう。この間に、感情的な反応を抑えることができます。
声かけ例:(心の中で)「1、2、3、4、5、6…よし、落ち着いた」
叱る前に、まず子どもの気持ちを言葉にして受け止めます。これがアタッチメントを守る最も重要なステップです。子どもは「お母さん、お父さんは自分のことを分かろうとしてくれている」と感じ、安心感を得られます。
声かけ例:
子どもの人格ではなく、具体的な行動について伝えます。「何がいけなかったのか」を子どもが理解できる言葉で説明しましょう。
声かけ例:
「〇〇しなさい」と一方的に指示するのではなく、子どもと一緒に「次はどうしたらいいか」を考えます。これにより、子どもは自分で考える力を身に付けることができます。
声かけ例:
叱った後は必ずフォローの言葉をかけましょう。「あなたのことが大好きだよ」「あなたならできるって信じているよ」という言葉が、子どもの自己肯定感を支えます。
声かけ例:
ここからは、日常でよくある場面ごとに、具体的な声かけ例をご紹介します。知識として知ることは、ものごとの解釈を変え、人の行動を変えます。ぜひ参考にしてみてください。
避けたい声かけ:「何回言ったら分かるの!」「片付けないなら捨てるよ!」
自己肯定感を守る声かけ:
避けたい声かけ:「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」「どうしていつもけんかするの」
自己肯定感を守る声かけ:
避けたい声かけ:「恥ずかしいからやめて!」「みんな見てるよ!」
自己肯定感を守る声かけ:
避けたい声かけ:「嘘つき!」「もう信用できない」
自己肯定感を守る声かけ:
「わかっちゃいるけど、そうできなくてゴメンね」と認めることです。親だって人間です。間違うことそのものには、大きな弊害はありません。大切なのは、叱った後のフォローです。
叱った後は、ぎゅっとハグしたり、頭をなでたりして、スキンシップを取りましょう。言葉以上に「あなたのことが大切だよ」というメッセージが伝わります。
もし感情的になりすぎてしまったら、「さっきは怒りすぎちゃってごめんね」と素直に謝りましょう。親が謝る姿を見せることで、子どもも「間違えても大丈夫」「謝ればやり直せる」ということを学びます。
叱った行動を子どもが改善できたときは、その努力をしっかり認めましょう。「さっき教えてあげたこと、ちゃんとできたね」という言葉が、子どもの自己肯定感を高めます。
日本アタッチメント育児協会では、発達心理学に基づく「育児の専門知識」を学ぶ、理論と実技の講座を提供しています。わたしたちは、アタッチメントを親に伝える「アタッチメントの伝道師」として、育児セラピストをはじめ、さまざまなインストラクターを育成しています。
知識の習得(レクチャー)と、実体験(ワークショップ)を通して、子育てにおける実践的なスキルを身に付けることができます。同じ志のもとに、多種多様な人たちが会して、同じ場で学びます。受講生の7割は、保育士、看護師、助産師などの専門職の方々です。
これまで9000人以上の方(2026年現在)が、当協会の講座を受講されています。育児セラピスト講座では、アタッチメント理論を実践的に学ぶことができます。
叱ることは子どもに「生きる指針」を教える大切な営みです。問題は「叱らないこと」ではなく「どう叱るか」です。子どもの気持ちを受け止めながら、行動の問題点を具体的に伝えることが重要です。
感情的になりそうなときは、まず6秒待ちましょう。その場を離れて深呼吸するのも効果的です。それでも感情的に叱ってしまったときは、後から素直に謝ることで親子の信頼関係を修復できます。
子どもが同じ行動を繰り返すのは、まだその行動を制御する脳の機能が発達途中だからです。「できないこと」を責めるのではなく、「どうしたらできるか」を一緒に考える姿勢が大切です。焦らず、長い目で見守りましょう。
子どもの前で叱り方について言い争うことは避けましょう。まずは夫婦で「どんな子どもに育ってほしいか」というゴールを共有し、そのために必要な関わり方を話し合うことをおすすめします。
子どもの自己肯定感を傷つけない叱り方のポイントをまとめます。
そうした「人間らしさ」を理解し、共感し、織り込んだうえで、それでも本質を伝え、体験をとおして感じてもらい、理論をもって納得してもらうことこそが、親子のコミュニケーションにおいて大切なことです。
いっしょに、その道を進んでみませんか。日本アタッチメント育児協会では、さまざまな講座やセミナーを通じて、みなさんの子育てを支援しています。みなさんの悩みや課題を、いっしょに向き合わせてください。